天国への道

愛を持って、自分の頭で考え、行動していきましょう

天国で⑤

 天国での準備は整いました、少なくとも私はそう考えていました。あとは転生先を探すだけ。眼鏡の件で使い果たしてしまった力を再度貯めながら、私は転生先を探しました。ちなみにこの頃は、転生先の国として中国が持て囃されていました。私も誘われました。「これからは中国だ、必ず発展するよ」そう言う人たちの言葉に心が動かなかったわけではありませんでしたが、私は日本が良かったので断りました。

 私たちの天国はそう上位にあるわけではないので、そこまで良い所に転生できるわけではありませんでした。飽くまで一般階級の少し暮らし向きが良い所や、上流階級でも問題を抱えているところがほとんどだったと思います。そんな中でよい転生先はやはり、早い者勝ちの奪い合い、時にはコネが必要だったりして、競争は熾烈でした。そんな中で争っていては、もし負けた時には残りはよくない所ばかりになりかねない。私は問題を抱えていても自分の送りたい人生の叶うところを選ぶことにしました。

 ほどなくして、良さそうなところが見つかりました。そこは私の祖母に当たる人物が天国の人間で、父の性格上の問題が原因で家庭が破滅するのがわかっていました。しかし一方で、私がそこに生まれることで父母ともに加護を貰えて幸せになれるだろうと考えました。父母ともに私に愛を注いでくれるだろう、何より私は母が好きでした。生まれてくる自分の能力的にも問題がなさそうでした。生まれついての病気もない、健康な子供として誕生できそうでした。私はここに転生することに決めました。

 私は決めた転生先を先生に報告しました。

「あなたは不幸になる」先生は転生先を見るなり、こう私に告げました。

 私は先生に、父母ともに愛してくれるだろうこと、それを通して父親の性格も良くなるかもしれないこと、加護があれば破滅を避けられるかもしれないことなどを熱意をもって先生に伝えました。先生はわかってくれました。

 私が教室に戻ると、仲間たちが集まってきました。私は転生先のことを伝えました。すると、みな口々に反対しました。今考えれば当然かもしれません。もっと良い転生先はいくらでもあるのです。私は彼らに説得され、先生のもとに戻りました。

 私が転生先を変えたいというと、先生は言いました。

「さっきあなたはあれほど言ったではありませんか、なぜ変えるのです?」

 私が考えを変えた旨を告げると、先生は再び言いました。

「私はあなたが言ったことが間違っているとは思いません。ですが変えたいというなら変えればいいでしょう」

 私は再度転生先を探しましたが、案の定、もう良い所はほとんど取られていて、今私が選んでいる転生先が一番マシといった有様でした。私は失意のうちに先生のもとへ帰りました。

 私は見てきた現状を先生に伝えました。そして、

「もっと遠く、例えば宇宙の先には転生先はないのでしょうか?」と聞きました。

 先生は、あるにはあるが自分で見つけなければならない、そこへの道は整備されていない、危険を伴うものだ、といったことを教えてくれました。

 結局私は最初に決めた転生先に転生することにしました。